毎週日曜に投稿するニュースレター「移動日記(仮)」では、デジタルノマド/ヘルスコーチとして国内外を移動する筆者が、現地で実際に見て、聞いて、体験したことや考察などを世界のどこかからお届けします。
今週のコンテンツ
・近況
・【Nomad Report.1】スペインデジタルノマドビザインタビュー「Ryoma&Emmaさん」
近況

今週はベトナムのダナンにいます。
石垣島から約7時間、香港でトランジットして、オンシーズンのダナンにやってきました。静かな石垣島での生活から一転、いまは車のクラクション、店から流れる大音量の音楽、マッサージの呼び込み、リゾートホテル建設の工事音など、途切れることのない喧騒のなかにいます。
数年前に初めてダナンを訪れたとき、僕はこの街の特にビーチエリアの雰囲気が好きでした。リゾートらしい開放感があり、人も多く、街に勢いがある。東南アジアらしい熱気がそのまま海辺まで続いていて、それがこの街の魅力のひとつだと感じていました。
でも、久しぶりに来てみると、少し印象が変わりました。ダナンのリゾート地としての発展が進んでいることもありますが、変わったのは、むしろ僕の感覚のほうなのかもしれません。石垣島でしばらく過ごし、静かな時間に慣れたあとでは、以前は活気として受け取っていたものが、いまはただのノイズのようにも感じられる。
朝7時にビーチへ行くと、すでにたくさんの人で賑わっています。日中の暑さを避けるために、早い時間に泳ぎに来ているのでしょう。それはそれで、この街らしい光景です。
ただ、その風景を見ながら、竹富島のことを思い出しました。竹富島では、朝はもちろん、昼間でもビーチがごった返すことはあまりありません(ハイシーズンに行ったことはないのですが)。人がいないわけではないけれど、空間にはいつも余白がある。海の音や風の気配が、人の声や音楽にかき消されることなく、そのまま残っている。
ダナンにいると、都市や観光地の「豊かさ」は、にぎわいとセットで語られることが多いのだとあらためて感じます。人が集まり、店が増え、音があふれ、街が動き続けていること。それは経済的な活気でもあり、旅行先としての魅力でもあります(今までなかったプロテインスムージーのお店が増えていました)。
でも一方で、石垣島や竹富島のような場所にいると、静けさそのものが、ひとつの価値なのだと思えてきます。静かな場所では、何か特別なことが起きるわけではありません。ただ、風の音や鳥の声、遠くの波の気配のような、小さなものがちゃんと感じられる。人が少ないからこそ、その土地そのものの輪郭が見えやすくなる気がします。
そう考えると、日本の地方にはまだまだ静かな場所が多いのかもしれません。もちろん、都市の便利さや海外のエネルギーにも魅力はあります。でも、世界の多くの場所がにぎわいとスピードを増していく中で、何も足さなくても成立する静けさを持った場所は、むしろどんどん貴重になっているようにも思えます。
静けさは、目に見える観光資源ではありません。派手さもないし、写真映えもしにくい。けれど、一度その価値に気づいてしまうと、そこに惹かれる感覚は意外と大きいと実感します。
数年前には魅力的に見えたこの街のにぎやかさが、いまは少し違って見える。その変化は、旅先が変わったというより、自分の中で静けさの価値が大きくなったからなのかもしれません。
この地球上に残された最後のフロンティアは、「静けさ」なのではないか。そんなことを考えながら、朝7時から賑わうビーチを歩いています。

【Nomad Report.1】スペインデジタルノマドビザインタビュー「Ryoma&Emmaさん」

これまで「デジタルノマドの窓」としてデジタルノマドビザについて解説してきた本連載。今回からは取材や実体験を通して「デジタルノマドの実態」を掘り下げていきます。
近年、多くの国でデジタルノマドビザ(以下、DNV)が発行されています。中でもスペインは人気の国の一つ。一方で、必要書類の多さや取得要件が複雑で、ビザについて調べていると、どうしても「取れるかどうか」に意識が集中しがちです。
しかし、実際に取得した人の話を聞くと、ビザはゴールではなく、生活を立ち上げるためのスタート地点であることに気付かされます。
今回お話を伺ったのは、スペインDNVを自力で申請し、無事許可を得たRyoma・Emmaさん夫婦です。2025年8月に取得を決意し、2026年1月に申請、追加提出を経て2月に許可。スペイン国内申請で進めた結果、許可は最大3年という形で下りています。
複雑なビザ申請の壁を、どのように自力で乗り越えたのか。さらに、取得後に待ち受けていた意外なハードルとは何だったのか。すでにスペイン・バルセロナでの生活を始めているお二人に、DNV取得までの道のりや今後の展望などを伺いました。
今回お話を伺ったRyomaさんEmmaさんは、実際にデジタルノマドビザを取得した経験から得た知見をもとに「個別相談」を行っています。相談したいという方は、以下のリンクからご確認ください(noteの記事に移動します)。
>スペインデジタルノマドビザ個別相談ページ
RyomaさんはSubstackでスペインでの生活などの情報を発信しています。大変興味深い内容なので、登録をおすすめします。
>RyomaさんのSubstackを見る
スペインデジタルノマドビザを取得するまでの暮らし

Ryomaさん、Emmaさん
――RyomaさんEmmaさん、本日はよろしくお願いいたします。今いらっしゃるのはバルセロナのご自宅ですよね。明るくていい感じです。
Ryomaさん:よろしくお願いします。はい、バルセロナでやっと借りることができました。家もそうですが立地も良くてとても気に入っています。
――改めて、スペインでDNVの承認が降りたということで、おめでとうございます。まずは、RyomaさんとEmmaさんのこれまでの暮らしについて聞かせてください。DNVを取るまではどのような暮らしをしてきたのでしょうか?
Ryomaさん:結婚前は、お互い東京でそれぞれの仕事をしながら、月に何度も飛行機に乗って2人で日本中を旅していました。ある時、ふと立ち寄った奄美大島に広がる海と空を眺めているとき、「世界中を旅したい」と言う思いに駆られ、その直感に従い、お互いに持っていた荷物も仕事も部屋も全て手放し数ヶ月間、世界一周の旅に行きました。それから結婚をし、「この旅をずっと続けていくためにはどうすればいいか」を2人で模索し、ある時はキャンピングカーで日本中を駆け巡ったり、ある時はホテル暮らしをしながら、世界中を周っていました。
なぜスペインのデジタルノマドビザを目指したのか
――そもそも、なぜスペインでDNVを取ろうと思ったのでしょうか?
Emmaさん:スペインは、私たちにとって「定住する場所」というより、2拠点目のベースキャンプにしたい場所なんです。長期的にスペインに定住するというよりも、今まで通り旅を続ける中で、世界に自分のベースキャンプがひとつ増えた、というイメージです。だから「移住に向けた〇〇」というより、「世界中をさらに移動しやすくなった」という気持ちが強いです。DNVは、どこかに定住するためだけのビザではなく、世界を移動する自由度を広げてくれるものだと捉えています。
時系列:決意から許可まで、どんな流れでしたか?
――差し支えない範囲で、時系列を改めて教えてください。
Emmaさん:昨年8月に取得を本格的に進め始めて、今年1月に申請しました。その後、追加提出を経て、2月に無事、許可(CONCEDER)をもらうことができました。
――申請はスペイン国内から進めたんですよね。国内申請を選んだ理由は何でしたか?
Emmaさん:日本国内で申請すると1年、スペイン国内で申請すると最大3年の滞在許可がもらえます。私はスペインの永住権まで目指しているので、スペイン国内で申請したくて、12月中旬にバルセロナに飛んで、デジタル申請のための諸々を終わらせた上で申請しました。
――弁護士や代行に頼らず自力で申請した理由も聞かせてください。
Emmaさん:今回は弁護士や会計事務所などを頼らず、すべて自分で行いました。スペインのCertificado Digital(電子証明書)を取得しに行ったり、銀行で申請費用を支払ったり、スペイン語が話せない中で助けてもらいながら申請まで完了できたことは、かかったお金以上にすごく良い経験でした。ビザを取得することが目的ではなく、ここに住むことが目的であることを再実感できましたし、振り返っても「自分で申請して本当に良かった」と思っています。
最大の山場:追加提出をどう突破したのか
――申請の中で、一番きつかった場面はどこでしたか?
Emmaさん:追加提出です。連絡が金曜の深夜に来て、10日以内に対応する必要がありました。実質は平日5日くらいでした。
――その短さはすごいですね。通知を見た瞬間、最初に何をしましたか?
Emmaさん:追加提出の中心が「行政に依頼する書類」だったので、とにかく時間がありませんでした。実質平日5日しかない中で、指定された書類を集めて提出するために動き続けるしかなかった、という感覚です。
――noteでは「提出してと言い切らず、“このような内容”と書かれていた」とも書かれていました。何を出せばいいか断定されない状況で、どう判断したのでしょう?
Emmaさん:そうなんです。「このような内容のどれかを提出」と書かれていて、この表現だと、日本で言うとこれだよね、という形で該当しそうな書類を調べて集めて、アポスティーユを取って、公認翻訳をして…という流れで、なんとか間に合わせました。
――さらにスペイン語が話せない状態で、市役所や銀行などを突破した、とも書かれていました。助けてもらった決定的な場面はありましたか?
Emmaさん:スペイン語が話せない中で無事に申請できたことに、いま振り返ってもありがたさを感じています。時には「スペイン語話せる人を連れてきて!」と言われることもありましたが、それでも親身になってくれて、結果的に助けてもらいながら申請まで完了できました。
許可(CONCEDER)の瞬間:意外と落ち着いていた理由
――許可が出た瞬間の描写が印象的でした。「意外と落ち着いていた」と書かれていましたよね。
Emmaさん:そうなんです。許可が出た瞬間は、想像以上に心は落ち着いていて、ふっと肩の力が抜けるような感覚がありました。それと同時に「本当にバルセロナに移住する(できる)んだな」という覚悟が湧いてきました。
――普通はもっと舞い上がりそうですが、なぜ落ち着いていたのでしょう?
Emmaさん:デジタルノマドビザの許可が降りて初めて、デジタルノマドビザを取得したその先が突然ものすごくリアルに感じました。本当にやるんだという、少し怖い気持ちと冒険心が湧いてきた、という感覚が近いです。頭の中でイメージしていた洞窟の前に立って、想像ではなかった風や匂いに怖さを感じ、全てがリアルに訪れてくる感覚になる――そんな気持ちになりました。
許可の次に来る意外な壁、その突破方法
――許可後に待っていたのがTIEでした。通知で「許可日から1か月以内にTIE申請義務」と書かれていて焦った、と。
Emmaさん:はい、かなり焦りました。今まではDNV取得に集中していて、取得後のことまで考えていませんでした。取得さえしたら、まあ何とかなるだろうと。でも色々調べていくと「ビザを申請するのと同じくらいやることがあるぞ…」となって焦りました。
――TIEとNIEの違いは、初見だと混乱しやすいですよね。初心者向けに説明すると、どうなりますか?
Emmaさん:TIEカードが日本でいうマイナンバーカード、NIEがマイナンバーです。スペインでは行政関連の手続きをする際、ほぼ全てで「TIEカード持ってる?」と最初に聞かれます。TIEがないと始まらない感覚でした。
――TIEがないことで、具体的に“どこから詰まり始めた”感覚がありましたか?
Emmaさん:感覚としては、TIEがないと前に進みにくいことが多いです。行政関連の業務はもちろん、DNV申請の時点ですら市役所で「TIEカード持ってる?」と聞かれたくらいなので、「何をするにも必要」だと感じています。
――国外申請と国内申請で、TIE周りのタイミングが変わる点にも触れていました。この違いが実務でどう効きましたか?
Emmaさん:申請方法が2種類あって、日本国内(国外)から申請すると「入国許可+居住許可」がもらえ、スペイン国内(UGE)から申請すると「居住許可のみ」がもらえます。そのため、TIEの取得タイミングが若干異なるそうです(取得方法自体は同じで、スペイン側から言われる取得タイミングが違うようです)。私はこの点を知らなかったので、そこも含めて焦りました。
ビザの次の現実は、住まい探し
――そして住まいです。noteでは「やばい、マジで部屋がない」と率直に書かれていました。
Emmaさん:本当に見つからなくて…。idealistaで30件ほど問い合わせたところ、返答があったのは2〜3件だけでした。独自サイトも教えてもらいましたが、見つかるのはシェアルームばかりで…。そもそも他の物件サイトでも問い合わせましたが、返答すらもらえませんでした。
――返信が来ない原因は、どう捉えていますか?(条件・時期・書類・信用など)
Emmaさん:少なくとも、「日本の感覚では信じられないけれど、これがバルセロナの賃貸市場のリアル」だと感じています。事前にネットで見ていた時は「案外部屋を選べそう」と思っていたのに、実際に動くと全然違いました。
――「夫婦なのでシェアルームは避けたいが、最終手段として検討」とも書かれていました。優先順位はどう決めていますか?
Emmaさん:私たちは夫婦での部屋探しなので、なるべくシェアルームは避けたいです。ただ、どうしても部屋が見つからないがTIEをすぐに取得する必要がある、となった場合の最終手段として考えています。
これから申請する人へ:自力申請の分岐点と、準備の順番
――最後に、これからDNVを目指す人へ。準備段階で「これだけは先にやっておけ」と言えることはありますか?
Emmaさん:デジタルノマドビザの申請は、決して簡単ではない・楽ではないと思います。でも、要件をクリアした上でしっかりと手順を踏み、絶対に取得したいという気持ちがあれば(忍耐強く対応すれば)、確実に取得できると思います。
――そして「取った後」に詰まらないために、申請前から見通しておくべきToDoは何でしょう?
Emmaさん:少なくとも、TIEは「これがないと始まらない」ものなので、許可後すぐに動く必要があると感じました。住まいも同じです。DNV取得後は「ビザを申請するのと同じくらいやることがある」ので、取得後の手続きまで含めて見通しておくのが大事だと思います。
今後、スペインをベースキャンプにどのように生きていくか
――最初に、「世界に自分のベースキャンプがひとつ増えた」とおっしゃっていました。そのベースキャンプから、今後、どのような生き方をしていきたいか、展望はありますか?
Ryomaさん・Emmaさん:まずは、自分たちを受け入れてくれたスペインへ恩返しをしたいと思っています。それはもしかすると、日本人向けの観光誘致かもしれませんし、日本食レストランを開くことかもしれません。今はこのバルセロナの地で、自分たちができることをたくさん模索しています。そして長期的な展望としては、世界中に「ベースキャンプ」を少しずつ増やしていきながら、夫婦で旅をしながら、同時に世界中に拠点を持ち生活するという、新しいライフスタイルを創出していきたいと考えています。
――Ryomaさん、Emmaさん、今回はお忙しいなか貴重なお話をありがとうございました!
次回に続きます。
編集/発行元:藤田啓介
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【2026年5月3日発行】