毎週日曜に投稿するニュースレター「移動日記(仮)」では、デジタルノマド/ヘルスコーチとして国内外を移動する筆者が、現地で実際に見て、聞いて、体験したことや考察などを世界のどこかからお届けします。
近況

今週も石垣島にいます。
石垣島というと、海の青さや南国の空気、ゆるやかな時間の流れを思い浮かべる人が多いかもしれません。約1ヶ月間この島に滞在して、実際にそうした魅力を肌で感じてきました。ただ、日本人として忘れてはならない戦時中の歴史があります。
今週の4月25日は世界マラリアデーでした。いまの日本で暮らしていると、マラリアについて考える機会はほぼないと思いますが、石垣島を含む八重山では、マラリアはかつてとても身近で、深刻な問題でした。
「八重山熱」とも呼ばれたマラリアは琉球王国時代から人々を苦しめてきた感染症で、1920年代には沖縄県が八重山を流行地域に指定し、組織的な予防・撲滅の取り組みを始めるほどでした。つまり、石垣島や八重山にとって、マラリアは長く地域の歴史そのものに関わってきた病だったのです。
その歴史が、最も痛ましいかたちで現れたのが戦時中です。八重山では沖縄本島のような大規模な地上戦は行われませんでしたが、1945年、日本軍は住民たちをマラリア有病地帯へと強制避難させました。波照間島など一部の島では3月以降すでに避難が始まっており、石垣島では6月1日に日本軍から退去命令が出されました。
避難先は山中で、食料の確保も難しく、高温多湿で不衛生な環境。治療薬もほとんどない状況でマラリアは爆発的に広がり、八重山全体で16,884人が罹患し、3,647人が死亡。中でも波照間島では、当時の全人口の3分の1以上が命を落としています。住民が移された先は、有病地帯であることが分かったうえでの命令でした。この出来事は「戦争マラリア」として、今も語り継がれています。
恥ずかしながら、僕はこの歴史について深く知らなかったため、ゲストハウスに置いてあった『沖縄 戦争マラリア』の書籍でその実態を知りました。そして世界マラリアデーに「八重山平和祈念館」を訪問。館内には戦争マラリアに関する資料や遺品が展示されており、マラリアで亡くなった子どもを土に埋める母親など、胸が痛くなるような事実と向き合うことになりました。
戦争の記憶は、空襲や砲撃だけではありません。病気によって多くの命が奪われたという事実も、この土地の戦争体験の一部です。しかもそれは、自然災害のように起きたものではなく、戦時下の命令によって深刻化した悲劇でした。
その書籍の中に、こんな場面があります。筆者が「もし自分が強制退避を命令する立場だったら、やはり同じようにしたのではないか」と自問するシーンです。住民を有病地帯へ送ることが何を意味するか、知っていたにもかかわらず命令が下された。その事実は重い。しかし戦争という構造の中では、個人が「命令しない」という選択を取ることは極めて難しかった。命令した側もまた、戦争という巨大な力に絡め取られた一人だったのかもしれません。善悪で割り切れない歴史の複雑さが、この問いの中に凝縮されています。
リゾートとしての石垣島だけを見ていると、そうした歴史はなかなか目に入ってきません。でも、この美しい風景の下には、確かにそうした記憶が積み重なっています。石垣島を訪れるなら、美しい海だけでなく、こうした場所にも一度足を運んでみる。その島の歴史を知ることで、見える景色は少し変わってくるはずです。
4月25日の世界マラリアデーは、世界でいまなお続く感染症との闘いを考える日です。同時に、石垣島や八重山にとっては、自分たちの土地の歴史を振り返るきっかけにもなります。マラリアは遠い世界の問題ではなく、この島の歴史そのものの中に刻まれている。そんなことを思いながら、石垣島での最後の日を過ごしています。

Q&Aコーナー
マガジン連載1周年企画として募集した質問に回答いたします。質問をくださりありがとうございました。
Q1.海外でノマド生活を始めるなら、最初にどの国がおすすめですか?
A.チェンマイから始めてみるのはいかがでしょうか。チェンマイには有名なYellowやPunspaceをはじめ、大小さまざまなコワーキングスペースのほかカフェも多いので仕事につながる出会いも生まれるかもしれません。実際に行ってみると、ノマドの聖地といわれる理由がわかると思います。まだバンコクほど物価上昇はないので、今のうちにぜひ。また、海外ではないですが、僕が滞在している石垣島もおすすめです。距離的には海外といっても過言ではないですし、空気感も本土とは異なります。僕が宿泊していたサンテラス石垣は仕事がとてもしやすく、立地もよくおすすめです!
Q2.藤田さんこんにちは。2回目のQ&Aコーナーありがとうございます。キンドルの100枚で見るシリーズの次回出版予定はありますか?
A.ありがとうございます!現在予定しているのは「台北」「香港」「クアラルンプール」ですが、まだ写真が足りていないので今年中に撮影旅行に行きたいと考えています。また、過去に訪れた台湾の太魯閣や日月潭が素晴らしかったので、台湾の自然をまとめた1冊を出したく、今年は阿里山などにも撮影に出かけたいと考えています。さらに、「100枚で見るシリーズ」だけでなく、デジタルノマド関連やヘルスケアなども予定していますので、ぜひ出版した際はご覧いただけますと幸いです。あなたのkindleも楽しみにしています!
デジタルノマドの窓[13]スペインのデジタルノマドビザが注目される理由と、制度の要点
スペインのデジタルノマドビザ(DNV)が、ここ数年で一気に存在感を増しました。各国がノマド制度を整備する中でも、スペインは「気になる国」として名前が挙がりやすい。理由は単純に人気の国だから、だけではありません。制度の設計が、移動しながら働く人の“現実の選択肢”として成立しやすい形になっているからです。
注目されるポイントのひとつは、制度が「長期滞在の入口」として整理されていることです。多くの国のノマド制度が滞在の許可に留まりやすい中で、スペインは「ビザ」と「居住許可」が制度の中で明確に区別されています。国外から申請する場合は最長1年のビザ、いっぽう合法的にスペインに滞在している場合は最大3年の居住許可に申請できる、という整理です。制度を読むだけでも、スペインが短期の旅より、生活を組み立てる滞在者を想定していることが分かります。
もうひとつは、「収入(資力)要件の置き方」が制度として強い点です。スペインの資力要件は固定額ではなく、最低賃金(SMI)に連動して整理され、申請者本人は原則SMIの200%相当が目安になります。これは、物価や賃金が変動しても制度側が追随しやすい設計です。さらに家族帯同の場合も加算ルールが整理されており、条件の読み替えがしやすい。こうした“制度の安定性”が、選ばれる理由になっています。
そしてスペインは「完全に国外の仕事だけ」へ寄せ切らず、現実的な例外を制度内に埋め込んでいます。雇用の場合は国外企業が前提ですが、フリーランスの場合、スペイン企業向け業務も一定割合まで許容される(上限20%)というルールで、国内市場との摩擦を管理しています。ノマドの働き方は現実にはグラデーションがあります。そこにルールで線を引きつつ、完全否定しない。このバランス感が「制度として使える」と感じられる理由だと思います。
ここからは、制度の要点を整理します。スペインのDNVは、公式には「国際的な性質のテレワーカー(international teleworkers)」という枠組みで整理され、申請ルートによって最初にもらえるものが変わります。国外から申請する場合は「ビザ(最長1年)」、すでに合法的にスペインに滞在している場合は「居住許可(最大3年)」を申請できる、という構造です。海外から入る人と、すでにスペインにいる人とで“入口”が違う。これがスペインDNVの最大の特徴です。
要件は大きく分けて、①対象となる働き方(国外の企業・クライアントの業務であること等)、②資力(収入)要件、③職務・資格要件、④身元・保険などの居住系要件、の4群で積み上がります。資力要件は前述のとおりSMI連動で、本人は原則200%相当。家族帯同の加算も規定されています。数字は年により変わるので「SMI連動」という“計算方法”で覚えるのが安全です。
職務・資格要件については、大学等の学位を持つ、または同等職種で3年以上の職務経験がある、といった条件が案内されています。また、企業側についても一定期間の存在や、雇用・業務関係が申請前の一定期間続いていることなど、関係性の継続を示す方向で要件が整理されています。さらに、無犯罪証明、スペインで有効な医療保険など、“居住許可らしい”書類も求められます。ここに「旅の延長ではなく、住む前提」という制度の性格が出ます。
ここまでが、スペインDNVの輪郭です。まとめると、スペインが注目されるのは、制度が(1)申請ルートによって1年ビザ/3年許可が分かれる“居住の入口”になっていること、(2)SMI連動などで条件が制度として安定しやすいこと、(3)フリーランスの20%ルールのように現実の働き方を制度内で整理していること、にあります。
ここで忘れてはならないのが、ビザ取得後の手続きです。あまり語られていませんが、実際にビザの許可が降りた方に聞くと、家探しや住民登録などのハードルの高さが浮き彫りになります。
そして次回からは、新しいマガジン「Nomad Report」として連載を開始します。第一回は、スペインデジタルノマドビザを取得した方へのインタビューで、デジタルノマドビザについて掘り下げます。
乱世をサバイブする体づくり

はじめに
現代は災害や不安定な社会情勢、不健康な食習慣が広がる“乱世”です。これまでの連載では、「9年の筋トレ経験と精密栄養学の知見」をもとに、筋力・食事・休養の3本柱でパフォーマンスを最大化する体づくりについて解説してきました。
筋トレの方法、食事の整え方、休養の重要性。それぞれを個別に取り上げてきましたが、最終回で改めて伝えたいのは、体づくりは単なる健康法でも、見た目づくりでもないということです。変化の大きい時代を生きるなかで、自分をどう支え、どう立て直すか。その土台になるのが、日々積み重ねる体づくりなのだと思います。
今回は最後に、この連載を通じて見えてきた「乱世をサバイブする体づくり」の本質をまとめたいと思います。
運動は、自分を前に進める力になる
運動の価値は、筋肉をつけることだけではありません。もちろん筋力や体力が高まることには意味がありますが、それ以上に大きいのは、日々を前向きに生きるための土台になることです。
体を動かす習慣があると、疲れにくくなり、気分が整いやすくなり、行動の初速が上がります。やらなければいけないことに向かう力、新しい環境に適応する力、落ち込んだときに立て直す力。そうしたものの背景には、いつも身体の状態があります。
乱世のような時代では、予定通りにいかないことが増えます。仕事も生活も環境も、思い通りにならないことの方が多いかもしれません。そんなときに必要なのは、完璧な準備ではなく、必要なときに動ける身体です。
鍛えるというのは、ただ重いものを持ち上げることではありません。自分の体を通して、自分を前に進める力を育てることでもあります。運動は、変化に対して踏ん張るための基礎体力であり、自分の可能性を狭めないための土台でもあるのです。
本連載では、自宅でできるトレーニングからジムで行うトレーニングの基礎までを解説してきました。毎日でなくても構いません。少しずつ、運動を習慣化して乱世に負けない体をつくっていきましょう。
栄養は、日々の状態を整える
栄養の役割もまた、単に痩せることや筋肉をつけることだけではありません。何を食べるかは、そのまま自分のコンディションに返ってきます。集中力、回復力、睡眠、気分。こうしたものは、思っている以上に日々の食事の影響を受けています。
食事が乱れると、体力だけでなく判断力や気分の安定まで崩れやすくなります。逆に、自分に合った食事ができていると、日中のエネルギーが安定し、疲れにくくなり、トレーニングの質も上がります。栄養は、体を作る材料であると同時に、毎日の生活の質を左右する要素でもあります。
食事法にはさまざまな流行があります。糖質制限、ケトジェニック、高タンパクなど、方法論はいくつもありますが、本当に大切なのは、名前のある方法を追いかけることではなく、自分の体調を安定させる食べ方を見つけることです。
乱世を生きるうえで必要なのは、特別な日に頑張れることではなく、日々を安定して乗り切れることです。栄養を整えることは、そのための最も身近で、最も現実的な自己管理だと思います。
栄養に関しても、毎日ストイックな食事を続ける必要はないです。大切な人との食事、その地でしか味わえない料理。食事は人生を楽しむために必要なイベントです。自己管理とのバランスを考えて自分に合った食事を見つけてください。
休養は、崩れても戻る力を支える
どれだけ運動や栄養を意識していても、人は疲れますし、乱れる日もあります。睡眠不足の日もあれば、食事が崩れる日もある。運動が思うようにできない週もあります。それは避けられません。
だからこそ大切なのは、崩れないことではなく、崩れても戻れることです。その力を支えているのが休養です。しっかり眠ること、無理をしすぎないこと、疲労をため込む前に調整すること。休養は、ただ何もしないことではなく、自分を回復させる技術です。
短い期間なら、無理を押し通して走り切ることもできるかもしれません。でも、人生は長期戦です。長く働き、長く学び、長く挑戦していくためには、回復しながら前に進む力が欠かせません。
休養を軽く見ないことは、自分を甘やかすことではありません。むしろ、自分を長く機能させるための戦略です。乱世をサバイブするためには、ただ強くあること以上に、消耗しきる前に立て直せることが重要なのだと思います。
乱世をサバイブする体づくりとは何か
ここまでの連載で考えてきた体づくりは、誰かに勝つためのものではありません。理想の体を見せるためだけのものでもありません。
乱世をサバイブする体づくりとは、自分を整え、自分を支え、自分を立て直せる状態を作ることです。外の世界が不安定でも、自分の内側に土台があれば、すべてが崩れるわけではありません。
もちろん、完璧である必要はありません。いつも理想通りに食べられるわけでも、眠れるわけでも、トレーニングできるわけでもない。それでも、また戻ればいい。少しずつ整え直せばいい。その積み重ねが、結局はいちばん強いのだと思います。
体づくりの本質は、自分を厳しく管理することではなく、自分を支えられるようになることなのかもしれません。調子のいい日も悪い日もある中で、それでも自分の身体と向き合い、少しずつ整えていく。その姿勢こそが、変化の大きい時代を生きる力につながっていくのだと思います。
この連載が、体づくりを単なる健康習慣としてではなく、自分を支える技術として考えるきっかけになっていればうれしいです。
完
編集/発行元:藤田啓介
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【2026年4月26日発行】