本ニュースレターは、デジタルノマド/ヘルスコーチとして国内外を移動する筆者が、現地で実際に見て、聞いて、体験したことや考察などを世界のどこかからお届けします。

近況

今週は石垣島と竹富島にいます。

石垣島からフェリーで少し移動しただけなのに、この島はまったく異なる空気を纏っています。赤瓦の屋根、白砂の道、サンゴの石垣。よく知られた風景ではあるけれど、実際に歩いてみると、ただ「沖縄らしい景色」があるというより、島全体に独特の静けさと秩序があることに気づきます。

竹富島の魅力は、風景がきれいなことだけではありません。あの景色は、自然にそうなったわけではなく、長い時間をかけて人の暮らしの中で守られてきたものです。1987年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたこの集落は、赤瓦の屋根や白砂の道だけでなく、サンゴの石垣「グック」、主屋と炊事棟からなる屋敷構成まで含めて、生活のかたちそのものが景観として残っています。

小さな島でありながら、八重山の歴史の中でも存在感のある場所でもあります。16世紀には竹富島に蔵元が創設され、しばらく八重山の政治を担った時期があったとされています。今の穏やかな島の姿からは少し意外ですが、竹富島はずっと昔から、独自の重みをもってきた場所だったようです。

この島をさらに特別にしているのが、今も生きている文化です。約600年の伝統を持つ種子取祭(タナドゥイ)は国の重要無形民俗文化財に指定されており、毎年旧暦9月を中心に伝統芸能が神々に奉納されます。島を離れた人たちも、この時期には戻ってくるそうです。

竹富島には「かしくさや うつぐみどまさる」という言葉があります。「一致協力することが何よりも大切」という意味です。観光で訪れるだけでは見えにくいけれど、この共同体の感覚こそが、竹富島の文化の核にあるのだと思います。

竹富島を歩いていると、整いすぎていないのに美しい、という印象を受けます。テーマパークのように作られた景観ではなく、実際に人が暮らし、その暮らしを守る意志が積み重なってできた風景だから。1972年につくられた「竹富島憲章」には、島の静けさを守ること、資源消費を最小限にとどめること、集落内でのふるまいに配慮することなど、観光を受け入れながらも島の美しさと暮らしを守るための考え方が記されています。

近年、こうした島ではオーバーツーリズムが課題になっています。竹富町は訪問税条例を公布し、2026年度中の徴収開始を目指して準備を進めています。これは観光客を減らすためというより、島の自然・景観・生活文化を持続可能な形で守るための仕組みづくりだと思います。

観光地として人気を集めるほど、その土地らしさが失われていくことは少なくありません。でも竹富島は、観光地でありながら、生活文化をどう守るかを考え続けている島です。

だからこそ、歩いているだけで「きれいだな」で終わらない。あの静けさや整った風景の背景に、島の人たちが守ってきた時間の厚みを感じるのです。
そしてその厚みは、宿泊してはじめて届いてくるものでもあります。

竹富島には司馬遼太郎が「街道をゆく」の執筆のために滞在したことでも知られる 高那旅館という老舗があります。今回はここに泊まりました。西桟橋に沈む夕陽も、満天の星空も、最終便が出たあとの静寂も、日帰りでは見えない景色です。

日帰りで簡単に行ける島ですが、1泊でも島に残ることで触れられる竹富島があると感じている週末です。青い海はもちろんですが、夕陽も最高です!

乱世をサバイブする体づくり

ここまでこの連載では、運動、栄養、休養という3つの視点から、乱世をサバイブするための体づくりについて書いてきました。終盤に入った今、改めて強く感じるのは、体づくりは単なる健康習慣でも、見た目を整えるためだけのものでもないということです。変化の大きい時代を生きるうえで、体そのものが重要な資本になっている。今回は、そんな「乱世をサバイブする体づくり」について整理してみたいと思います。

運動:行動力を支えるのは、鍛えた体である

身体資本という言葉を聞くと、少し大げさに感じるかもしれません。しかし実際には、私たちは日々、体の状態に大きく左右されながら生きています。朝からだるい日、疲れが抜けていない日、集中が続かない日。そういう日は、やるべきことが分かっていても行動に移しにくくなります。

逆に、体が軽い日、よく眠れていて頭が冴えている日、疲労がたまりすぎていない日は、動き出しも早くなります。人に会う、仕事を進める、決断する、移動する、新しいことに挑戦する。そうしたすべての土台にあるのが、結局は身体の状態です。

運動の価値は、単に筋肉を増やすことだけではありません。体力を維持し、疲れにくさを高め、気分を安定させ、日常の行動力を底上げすることにあります。変化の大きい時代では、じっと守る力よりも、必要なときに動ける力のほうが重要になる場面が増えます。そのとき、運動によって作られた身体は、目に見えない推進力になります。

また、年齢を重ねるほど、この差は大きくなります。若い頃は多少無理をしても回復できたことが、年を重ねるにつれて難しくなっていきます。だからこそ、運動を習慣にしているかどうかは、数年後の自分に大きな差を生みます。身体資本とは、未来の選択肢を減らさないための備えでもあります。

運動は派手な成果がすぐに出るものではありません。しかし、続けることで確実に「動ける自分」を作っていきます。これは不安定な時代を生きるうえで、思っている以上に大きな意味を持つはずです。

栄養:コンディションを整えることが武器になる

運動と同じくらい重要なのが栄養です。なぜなら、どれだけ鍛えていても、日々の食事が乱れていれば、体は安定しないからです。エネルギー不足、タンパク質不足、血糖の乱高下、水分やミネラルの不足。こうした小さな乱れが積み重なると、集中力、回復力、気分、睡眠、食欲にまで影響が広がっていきます。

栄養の大切さは、体を大きくするか痩せるかといった話だけではありません。むしろ本質は、毎日を安定して動ける状態に保つことにあります。しっかり働く、考える、トレーニングする、休む。そうした日常の質は、思っている以上に食べたもので決まっています。

現代は情報が多く、食事法にも流行があります。糖質制限、ケトジェニック、高タンパク、ファスティング。どれも一部では有効ですが、身体資本という視点で見ると、大事なのは流行の方法を追いかけることではなく、自分の体調を安定させる食事を見つけることです。

例えば、同じ食事法でも合う人と合わない人がいます。ある人にとっては集中力が上がる方法が、別の人には疲労感やパフォーマンス低下につながることもある。だからこそ必要なのは、正しそうな理論に振り回されることではなく、自分の目的と体感に基づいて選ぶことです。

不安定な時代には、環境の変化そのものは避けられません。仕事の波、生活リズムの変化、移動、ストレス、人間関係。そうした外部環境が揺れるほど、内側の状態を整える重要性は高まります。栄養は、そのための最も基本的で、最も見落とされやすい土台です。

何を食べるかは、毎日の小さな選択です。しかし、その小さな選択の積み重ねが、数か月後、数年後のコンディションを作っていきます。身体資本とは、特別な一発で作るものではなく、食事の積み重ねによって静かに育てていくものなのだと思います。

休養:崩れない人ではなく、立て直せる人が強い

体づくりという言葉からは、つい「強い体」「タフな人」というイメージを持ちやすいかもしれません。けれど実際に大事なのは、ずっと崩れないことではありません。人は必ず疲れますし、生活が乱れる日もあります。忙しい時期もあれば、睡眠不足になることもある。乱世のような現代であればなおさら、常に完璧な状態を保つのは現実的ではありません。

だからこそ、本当に強いのは、崩れない人ではなく、崩れても立て直せる人です。そして、その力を支えているのが休養です。

休養は単なる停止ではありません。疲労を抜き、次にまた動ける状態へ戻すための技術です。睡眠を確保すること、オフ日をつくること、軽く歩くこと、湯船に浸かること、情報を入れすぎないこと。こうした一見地味な行動が、実は身体資本を守るうえで大きな意味を持っています。

とくに現代は、体より先に脳が疲れている人も多いように感じます。情報量が多く、判断が多く、常にオンラインで、気づけば休んでいるつもりでも頭が休まっていない。そういう状態では、トレーニングの効果も出にくく、食事管理も崩れやすくなります。休養が不足すると、運動や栄養も生きてこないのです。

また、休養は長く戦うための視点でもあります。短期間の頑張りなら、無理をして押し切ることもできるでしょう。しかし、人生は短期決戦ではありません。働くことも、学ぶことも、挑戦することも、何年も続いていくものです。そこで必要になるのは、一時的な根性ではなく、回復しながら前に進む力です。

休養を軽視しないことは、自分を甘やかすことではありません。むしろ、自分を長く機能させるための戦略です。乱世を生きるための身体資本とは、強くなることだけではなく、消耗しすぎないことでもある。その視点は、これからますます重要になるはずです。

まとめ

変化の大きい時代を生きるうえで、体は単なる入れ物ではありません。行動力を支え、コンディションを整え、崩れても立て直すための土台です。つまり、身体そのものが資本なのだと思います。

運動、栄養、休養は、その身体資本を育てるための基本です。どれかひとつだけではなく、3つを無理なく積み重ねていくことが、これからの時代を生きる力につながっていきます。

次週に続きます。

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